お一人様高齢女性 お悩み対策(任意後見制度の活用)

先日、80代女性のこれからのお金のこと生活のことについてのサポートをさせて頂く話がまとまりました(見守り契約、財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約という4つの契約を公正証書で作成)。

<きっかけ>
その方は、80代の方ですがシャキシャキと歩かれて、整理整頓がとてもお上手。人付き合いもお上手。健康にも気を付けていて健康診断もきちんと受けていて本当に今は問題なく生活をされています。3年ほど前にご主人が他界され、それからお一人での生活になり色々な不安な気持ちがよぎるようになりました。この先、自分の身に何が起きるかわからない、頼りにしている親戚はいるけど県外で生活しているのでわざわざ来てもらうのは大変だし、そこでの生活があるので迷惑はなるべくかけたくない、ご主人の相続でやることが沢山あって大変な思いをしたけど自分のときはこれを誰に頼もうか・・・そんなお気持ちからご自分で後見人のことや死後事務のことを調べたり、友人に相談して知識を得ていらっしゃいました。
私とは、ご主人の相続のときにお手伝いをさせて頂いたご縁で、3回忌が過ぎた頃から色々なお話を聴かせて頂きました。そして、司法書士なら後見人を頼める、任意後見というを利用すれば自分の選んだ人にやってもらえる、体が弱った後のことや死んだ後のことだけど今できるできる準備はしておきたい、との思いから今回の話につながりました。

<心配の中身>
具体的な心配の中身は次のようなことです。
今は大丈夫だけど…
  ①認知症になったとき、誰か気づいてくれるかな。

  ②転んで骨折したら身動きがとれなくなって自分でお金が下せないときはどうしよう。

  ③介護が必要になったときの介護サービスの申請を誰かやってくれるだろうか。

  ④認知症になり一人で生活できなくなったらどこで生活するの。通帳の管理は誰がしてくれるの。

亡くなった後のこと…
  ⑤自宅は兄弟ではなく先祖のお墓をみてくれる親戚に残したい

  ⑥自分が死んだ後の色々なこと(葬儀の手配、知人への連絡、役所の手続き、税金や公共料金の支払い)を親戚に頼むのは難しい

<対策>
不安の中身の対策として、具体的には4つの契約と遺言作成という方法をとりました。4つの契約は本人が委任者、私が受任者となる委任契約です。契約なので具体的なことは話し合って希望に沿って自由に決められます。 それぞれ概要を説明すると、

①の不安に関しては「見守り契約」の締結
本人と定期的に電話や訪問で連絡をとり、日常生活の変化がないかを見守るための契約です。見守りながら本人の体の状況を確認したり、判断能力の衰えがあれば次の段階に移行するかを判断します。

②と③の不安に関しては「財産管理委任契約」の締結
本人の判断能力に問題なくても身体的な問題がおきたとき、私が本人に代わってお金の管理や介護サービスの申請などを行うための契約です。その後もし判断能力も衰えてしまったときは任意後見契約に移行します。

③と④の不安に関しては「任意後見契約」の締結
本人の判断能力が衰えてしまった後、私がお金の管理(財産管理)や入院するときの医療施設や介護施設を利用するときの手続き(身上監護)を行うための契約です。この契約の中身の効力が生じるのは、裁判所に任意後見監督人が選任を申立て、監督人が選任されてからです。契約発効後は、基本的に私が通帳の全てを預かって管理をします。本人が亡くなるまでこの契約は続きます。

⑤の不安に関しては「公正証書遺言」の作成
亡くなったあとの本人の財産の承継先を遺言に残しました。そうすることで相続人同士の遺産分割の話し合いはしなくてよく、法律上相続人ではない親戚に財産をあげることもできます。また、公正証書にしておけば原本が無くなる心配もありませんし、内容に関しても法律上のチェックを公証人がしてくれます。

⑥の不安に関しては「死後事務委任契約」の締結
本人が亡くなった後の事務処理(知人への連絡、葬儀納骨、行政への連絡、債務の支払い)を私が相続人に代わって行うための契約です。

<まとめ>
私が何でもやれるわけではなく、私は財産の管理と身上監護(介護申請や必要な施設利用の契約、病院の入院手続き)を担当し、例えば介護が必要になった時の事実上の行為(身の回りのお世話)は介護サービス提供事業者がやってくれることになります。

これら対策をとるとらないはその人の家族環境や生活状況次第ですし、これで本人の不安の全て解決できるわけではないかもしれませんが、私としてはこの方のお悩み対策ができてそれまでより安心して生活を送って頂ける、ご本人が他界された後の相続人の面倒な手間は確実に省けると思っています。

私とこの方とのお付き合いはこれからです。今後の人生をより豊かに過ごしていただきたいと思いますし、それを見守らせていただこうと思っています。

同じような不安をお持ちの方がいたらこんな対策があるのかと参考にしていただきたいです。話を聴いてみたい方いらっしゃいましたら是非当事務所までお問合せ下さい。